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 このイモウトノカタチのどこが糞かと言われると、それはまあ一言で語り尽くせるものではないのですが、大きく二つの理由があります。

 まず一つ目。OHPにてメインヒロインとして紹介されパッケージにもでかでかと描かれ体験版の時点で人気を博していたヒロイン「ミータ」にルートが用意されていない点です。
 ミータのルート、全く無いわけではないのですが、同じくヒロインの一人である真結希とセット扱いにされてしまっており、特に後半は真結希の方に比重が置かれたシナリオ設計となっているため、ミータに期待してプレイしたユーザーには非常に肩透しの内容となっています。
 真結希とミータの3Pなど見るべきところもあるのですがメインヒロインとして紹介されていたヒロインのシナリオとして考えれば批判が集まるのも仕方ないものと言えるでしょう。

 ミータの場合、本来サブヒロインの位置に居るべきなのを無理矢理メインヒロインの位置に持ってきたような不自然さを感じます。真結希シナリオを考えた場合、ミータと切りはずすのは不可能ですからね。本来、真結希ルートの介添えだったミータを(隠しヒロインである真結希は表に出せないので)メインヒロインが三人だと見栄えが悪いので頭数合わせでヒロインに加えたのではないでしょうか。

 真結希の扱いに関してもそうですが、広報という点でイモウトノカタチには違和感を感じます。
 隠しヒロインという事でかパッケージには真結希の姿は影も形もありません。それはそれでいいと思うのですが、イモウトノカタチのサイトには発売前から思いっきり顔出ししているんですよね。扱いぶれすぎだろうと。
 最初からミータではなく真結希をメインヒロインにしておけばこんなに非難もされなかったでしょうに何故そうしなかったのか不思議です。真結希を隠しておきたいというならサイトにも出さないでしょうし。
 
 初動の占める割合の高いエロゲですから隠しヒロインを真っ正直に隠しておくメリットが少なく事前に真結希の顔出しをするのは理解出来ますが、ミータに関しては最初から騙す気満々だったという以外に理由が浮かばないんですよね。

 CUFFSと言えばメインヒロインである瑠璃のルートが存在しない他明らかに未完成の状態で販売に踏み切り、後々対応すると言っておきながら2012年現在未だにきちんとした対応のなされていない「Garde」を送り出した会社ですが、このイモウトノカタチ、ある意味Gardenよりも質の悪い売り方がされていると思います。


 で、個人的にはミータルートが無い点はそこまでマイナスポイントではありません。浮気とか3Pとかまさに俺得展開ですし。
 それより問題だったのはこのイモウトノカタチ、主人公が致命的なまでに残念な人間だという点です。

 エロゲの主人公というと鈍感だったり難聴だったりというのがデフォですが、この作品の主人公の雪人の屑っぷりはそんな次元ではなくはっきりと脳に障碍のあるレベルの行動を繰り返します。
 真結希はナノマシンの暴走で脳以外の全身の神経をズタズタにされたという設定でしたが、雪人の場合は真結希とは逆に脳の神経をナノマシンで壊されたんじゃないかと。
 
 この雪人という主人公とにかく他人の気持ちを全く考えない極端に自己中心的な人間として描かれています。
 基本的に考えて行動すると言う事ができず、しかも他人の意見になかなか耳を傾けられない。周りが冷静な意見をぶつけても感情が先走って怒鳴り返したりする事も屡々。行動の全てが後先を考えないものでしかも他人の感情を一顧だにしない。自分が良ければ後は何も関係ないという思考でとにかく質が悪いです。
 口では散々妹を大切にしている風に語りながらいざとなれば自分の感情を優先して、妹を危険な目にあわせる事に全く躊躇いがありません。というか、真結希に対する行動は完全に殺人未遂。

 
 シナリオに関しても決してほめられるものではありませんでした。
 設定自体は面白そうだったんですが、広げた風呂敷が大きすぎて完全に手に余っています。災害に関しての部分は矛盾点が多すぎますし、どのルートでもラスト附近の適当っぷりが目に余ります。誤字脱字は言うに及ばず、寝ぼけながら書いたのかそれとも酔っ払っていたのか全くの意味不明とも言える文章も散見する始末。
 アニメ化したヨスガノソラのお陰で注目も集めた作品だったでしょうに、買ってくれたユーザーに見事に後足で砂をかけてくれました。

 以下、ヒロイン毎に感想と言う名の愚痴


美馬千毬

 後から思えば千毬を最初にクリアしていて本当に良かったと思います。もし他のヒロインをクリアした後だったら決してプレイしようと思わなかったでしょう。それくらい他ルートでの千毬のウザさ、不快さは抜きん出ています。
 病気の千毬を抱えて病院に走るシーン、プレイした時は「馬鹿か、せめてタクシー呼べや」と雪人の馬鹿っぷりに辟易したものですが、今ならそんな感傷も抱けないかもしれません。
 さて、このルート(に限らないのが悲しいですが)とにかくクライマックスが適当適当アンド適当。
 別に大地震があって地形が変わったわけでもないのに雪人がちょっと探したら見つけられた出入口が十五年もの間誰にも見つけられなかったという不思議。救助隊その他一体何を探していたんでしょうか。
 その中に十五年潜んでいた千毬の両親。十五年前はほんの子供だったはずの千毬と雪人をひと目で見ぬくという超人的な洞察力はともかくとして「償い」とか言いながら引きこもっておいてその癖雪人の説得によりあっさり地上へ。そして何故か入院。外との出入りは自由っぽかったし居たって元気に見えたんだけど何故入院なのか。というか結局「償い」とはなんだったのか最後まで明言されない始末。
 どうでもいいですが、この再開の場面でも雪人の知障っぷりが如実に出ていますね。明確な証拠もなく勝手に千毬を実の妹だと思い込み、それを覆す証拠が目の前に現れたのになかなか理解しようとしない。馬鹿そのものの主人公は非常に不愉快でした。
 千毬とHに及ぶ際の雪人の思考もなかなか電波。

 千毬を本当の妹にするよ→SEX

 うん、意味わからん。グダグダ言ってHする事に理由を求めてもったいぶるくらいならHする理由なんて「そこに穴があるから」だけで良いと強く思いました。


澄稀あやか

 このルートの主人公は他のルートよりも大分まとも。ルート自体の出来も最高レベルです。他の作品と比べなければの話ではありますが。
 ミスリードなのかなんなのか。あやかが自分が養子だと知る件はちょっと予想外でした。いやお前、自分が養子だって知らなかったのかよと。
 ちらちらとあやかが両親の実の娘ではないっぽい描写があったのでそれをあやかが知らなかった事は驚きでした。ミスリードだったのかもしれませんが、意味あるのか、これ。おかげであやかが養子だって知ってもなんの驚きも感じられなかったですし。
 このルートは順也もさる事ながらとにかく千毬(おまけで晴哉も)のウザさが半端無かったです。
 あやかは度々いじられキャラなどと表現されていますが、いじられているのではなくいじめられているの間違いじゃね?と突っ込みたい事多々ありました。
 特にあやかが金銭的に困窮している際に千毬と晴哉が無理矢理タカっていったのは本気で不愉快でした。何故あそこで一発ぶん殴らなかったのかと。
 晴哉って主人公達の友人面していますが、ただの嫌な奴なんですよね、ゲームをプレイしていると。もうちょっと良い奴として描写してやれよと思いました。
 あと寮長も地味に酷かったですね。あやかが困っている際に杓子定規な答えに終始し融通がきかないというのは。例えばこれが学園の教師などならまだいいですが、一学生がする事となると自分の身可愛さという印象で感じ悪かったです。あやかを宿泊させることのリスクがそこまで高いようには見えませんでしたし。結果としてあやかが危険な目に合っていたというのも拍車を掛けます。抜きゲだったら確実に陵辱パターンですよ(ぇ

 他のルートに比べれば綺麗に終わっていますが、気になったのはこのルートのライター、物凄く間のとり方が下手な点。順也に出生の秘密をばらすシーンなんかがそうですが、折角の盛り上がるシーンなのに演出も使わず淡々と描写しちゃってるからイマイチ盛り上がりに欠けてしまっている印象です。ライターの責任ではないのかもしれませんが。
 あのシーン自体微妙といえば微妙だったんですが、雪人はあやかの意思を尊重するのかしないのかどっちなんだよと。

瀬名美優樹
 
 なんか色々酷くて辛いルートでした。ここまで我慢していや未読スキップを解禁にしてしまう程度に。
 このルートでも寮長が嫌な奴で印象に残りました。
 図書館で調べ物をする件、他人の悪意のない行動を制限してまで被災者に配慮する必要があるのかなあ、と。まるで被災者である事を振りかざしているようで不愉快でした。
 阪神大震災の被災者には結構な数話す機会がありましたが十五年立たずともここまで尊大に振る舞う人は皆無でしたし。
 親善大使の件はもはや何といっていいのか。
 ここでも寮長が支離滅裂で訳のわからん理屈をこねていましたね。そんなに被災者である事を傘に着たいのかと。そして二人三脚なのり抱っこして走るのはルールとしてどうなのかと。
 最後は打ち切りエンド?
 ここから真結希シナリオに繋げて姉妹丼だったら良かったのに!とちょっと思いました。双子なのに3P無いとか邪道もいいとこです。


ミータ&真結希

 途中までは良い出来だと思ったんですがね。終わっていれば雪人のキチガイっぷりが一番発揮されたルートだったという。
 真結希は中の人の演技も相まって非常に可愛かったし、ミータもいい味出してたしとキャラで言えば一番良かったルートなだけに残念でなりません。
 嵐の中自分のエゴの為だけに美優樹を危険な目に遭わせたかと思えば今度は治療中の真結希無理矢理連れ出すとかもう馬鹿以下の何かとしか思えません。
 状況から考えて点滴の類がしてあったと思うんですが、ちゃんと針抜いたんだろうなあ、おい?
 最後は唐突に出てきたナノマシンなんて設定で奇跡よろしく万事解決とか、もう考える事を放棄したとしか。演出なんかから感動させようとしていたのは分かるのですが、もう完全に白けながら見るより他にありませんでした。
 いや、結局ミータを拉致った連中は何だったんだよとか、雪人質の両親の研究とミータとの関連性はとか、そもそも土砂が押し流した&堆積したはずなのにどうしてタイムカプセルがその場から発見出来るんだよとか考える事を放棄しないといけないのはプレイヤー側なのかもしれませんが。

 唯一評価出来る点はミータと真結希を両方愛する選択をした事でしょうか。シナリオの都合と言ってしまえばそれまでですが。
 エロゲで浮気とか二股って非常にレアですからね。ここだけはイモウトノカタチをプレイして良かったと素直に言えます。二人とも可愛いし。
 特に真結希は腹黒っぷりが素敵。好きだった男が他の女とくっついても「おめでとう」なんて言えてしまうヒロインばかりのなか真結希みたいなヒロインが居るとホッとします。そう言えば、美優樹は蹴落としてミータはOKなのもやっぱミータに対する自分は人間だという優越感からなんでしょうかね。



 散々言って来ましたが、音楽面は非常に素晴らしい作品でした。予約特典でOP&ED曲のフルバージョンの入ったマキシシングルが、初回限定版にはサントラが同梱されているので三千円前後まで中古価格が暴落した現在。CDのオマケにゲームが附いてくると考えればなかなかコスパの良い商品かもしれません。




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