OHP批評空間の点数:50点
印象としては大幅デチューンされた信長の野望。とにかくシステム面での不親切さが印象的な作品で、かゆいところに手が届かないUIはスキー靴の上から虫刺されを掻いているようなもどかしさといらつきをプレイヤーに与えてくれます。特に信長の野望などのSLGに慣れている人にとっては耐え難いレベルなのではないかと。
不満点は数え上げればキリがありませんが一番気になったのはやはりソート機能が附いていない事でしょう。それも一箇所だけではなく様々な箇所で。
例えば、編成画面。自軍のユニット一覧は主人公から順番に並んでいるんですが、この順番を自由に並び替える事が出来ません。ソート機能位当然附いていると思っていたのでプレイ開始直後はどこでユニットを並び替えればいいのかと無駄な時間を過ごしてしまいました。
一応軍団を作る事で多少は順番を変える事は出来ますがこのやり方ではかなりの制約がありますし、何より主人公プラス配下扱いの二人は完全に固定されていて動かす事が出来ません。
この順番固定、何よりも経験値稼ぎや合成用モンスターの捕獲の為に討伐イベントをこなす際にその不便さを発揮する事になります。順番固定でしかも前回選択は毎回リセットされるのでレベル上げしたいユニットがいる場合、いちいち選択されたユニットを解除して改めて選びなおさないといけないんですよね。些細な手間ですが、経験値稼ぎなどをしようとこの作業を何度も繰り返そうとすると、この辺の不親切さが身にしみてきます。前回選択したユニットを記憶してくれるだけでも手間が全然違ってきますから。
勿論、ソート機能が無いので目当てのユニットを探すのが地味に面倒になります。また、ユニット選択画面自体も不親切な印象。レベルとか属性とか種族とか一覧で見えれるようにしてくれればユニット選ぶのが便利だと思うのですが、いちいちユニットにカーソル合わせないとレベルも属性も種族も何も見れないんですよね。その為ユニット毎の大まかな能力を記憶していないと状況に合わせて出撃ユニットを選ぶという作業が非常に面倒になります。
また、占領した拠点ごとの収支や人口などが見れるのはいいんですが、この画面でもやはりソート機能が附いていません。ですので、例えば特殊能力で収入や支出をX%増減出来るキャラが居るんですが、効率的に配置しようと思ったらいちいち全拠点の数字を調べないといけなくなります。拠点の各種数字を調べようとする際もいちいち画面をスクロールさせなければいけませんし、しかも自軍拠点と敵軍拠点が混在しているため非常に画面が見難くなっています。
また、配合の際のモンスターを選ぶ画面でもソート機能無し。しかもモンスター一覧画面なども無く、名前とレベルと所持数だけが書かれた画面をひたすらスクロールさせて目当てのユニットを探していかなければなりません。せめて五十音順に並び替える位させろと。わざとストレス溜めさせる為に設計したんじゃないかと疑うくらいに面倒で不親切です。
以上のようにとにかく欲しいと思える箇所で尽くソート機能が附いていないので非常にストレスがたまります。ソートってエウシュリーの技術力では附けられない程高度な機能なんでしょうか?
また、モンスター配合に関しては、メガテンやペルソナシリーズのパチもんといった感じでこれも非常にストレスの貯まる代物。
配合するモンスターを探す際の不親切さは先に書いた通りですが、配合自体も決められた一部の配合以外は全て外れ扱いで雀の涙程の経験値が手に入るだけとなっています。その為配合の際はひたすら新しいモンスターが誕生する配合を手作業で探して行かなければなりません。(一応配合が書かれたアイテムが購入出来ますが)wikiを見てプレイしろと言わんばかりです。
しかも配合は最初のモンスターと二番目のモンスター、順番を入れ替えると別の配合扱いとなる仕様。配合で生まれるモンスターの種類は多くないのになんでこんな仕様にしたのか理解に苦しみます。
また、お店で購入出来たり、捕獲出来るモンスターの種類が非常に限られているので目当てのモンスターを揃えようとしたら同じ配合を何度も何度も繰り返さないといけません。とにかく労力だけは費やさせようというシステムとなっている印象です。
全体的なゲーム展開に関しては非常に自由度が少ない印象を受けます。
どこの国にも自分のタイミングで宣戦布告する事が出来るので一見自由度が高いように見えますが、本筋と言える正史ルートを目指そうとするとこちらから戦争を仕掛けると確実にルートに進めない上に、捕虜の扱い等も全て決められているので実際には非常に窮屈なプレイを強いられます。
最初は斎藤家と同盟してそのあと攻めて来る今川家を撃退ししかるのち代替わりした斎藤家と敵対、といったように全ての行動を歴史にそったものにしないといけないって事なんでしょうが、もう少しなんとかして欲しかった印象。宣戦布告しなくても一定ターンが過ぎると強制的に宣戦布告する、とかならある程度の自由度もあって且つ歴史にそったものに出来て良かった気がします。
捕虜にした女ユニットは娼婦にする事が出来たりしますが、この展開エロゲだから仕方ないとは言えもうちょっとなんとかならなかったのかと。占領した直後の相手国の要人を娼婦にするとか普通に考えて叛乱誘ってるようにしか思えませんし何の意図があるのは甚だ疑問です。主人公が馬鹿に見える展開は勘弁して欲しい所。普通に側室にするとかでいい気がするんですが、どうしても凌辱入れたかったんですかね。
バトル面で言えば、ユニットの向きが上下左右の四方向しかないのに最初唖然としました。攻撃範囲が自身中心円のユニットは良いんですが、前方円のユニットの場合、攻撃範囲が四方向にしか向かないので斜めに進軍すると正面の敵が攻撃範囲に入らないとかいう事態が発生してしまうんですよね。理想は全方向。せめて八方向に向き変えられるようにして欲しかったんですが技術的に無理だったんでしょうか?
また、レベル上限も低すぎた気がします。ゲーム中盤では既にカンストするユニットが出てきてしまいましたから。
難易度としてはかなり低めの印象。敵AIは囮に簡単に引っかかりますし拠点でのHP回復や障害物などを駆使すれば多少のレベル差でも簡単に覆せます。
そして兵の補充コストが非常に安い為損害を気にせずガンガン敵に進攻出来ます。ソ連よろしく兵は畑で取れるという認識。
シナリオに関しては論ずるに値しないといったところでしょうか。特に正史ルートには戦略無視した馬鹿みたいな展開を選ばないと行き着けませんし、先にも述べたように自由度が少なく決められた路線を走らされているようであまり楽しいものではありませんでした。
声優に関しては男性陣が非常に豪華なのは良かったです。女性声優は裏も表も演技力に差はない(むしろ裏の人の方が優れていたり)ですが男性声優は裏と表で能力に雲泥の差があるので、男性声優に力を入れるのは非常に嬉しいところです。
一つだけ缺点を上げるとすればアルの声なわけですが、まああれはBBAボイスにする事で「なんでアルが攻略出来ないんだ!」という声を封殺しようとしたと思う事にしておきます。
どうしても似たようなシステムを採用している信長の野望などと比べてしまうためにとにかく粗が目立つ作品でした。開発力や資金力がエウシュリーとコーエーでは段違いでしょうから完成度で見劣りするのは仕方ないかもしれませんが、それにしてもここまで酷いのかと思わずにはいられない内容でした。
ソート機能など自分達でテストプレイなりなんなりした際に不便だとは感じなかったのか不思議でなりません。それともエウシュリー社員は他社のSLGをプレイした事がないとか?それなら不便さを感じないという可能性もあるのかもしれませんが……。
体験版での評判が悪く、それを踏まえて製品版ではかなりの改良がなされたという事ですが、それでこの出来というのは元が酷すぎて修正が追いつかなかったのでしょうか。
エロゲーでこういうSLGを作れるブランドは希少なので頑張って欲しい所ではあるのですが、だからといって糞ゲーを許容出来るわけでもなく。
もう少し真剣に作品を作って欲しい所ではあります。