革命の頭脳として、キューバ革命を勝利へと導いた
エルネスト・チェッ・ゲバラ。彼が自らの経験を交えながら革命の戦い方について書いたゲリラ戦争の教科書とも言える一冊。
ゲリラの基本戦術や組織論、生活信条などが具体的に書かれており、読み物としての面白さは殆ど無い。(そもそも著者がそのようなものを求めて居ないので当然ではあるのだが)ゲリラの具体的な戦い方に関しても、現在では兵器などの改良や世界情勢の変化に伴い殆ど用を成さないと思われる。しかし、それらとは別に本書に書かれているゲバラの考え方には頷かされるものが多々ある事も事実である。
印象に残ったのは暗殺の否定。彼はその及予想される被害、相手組織に対する影響などから暗殺の有効性を否定している。実際、世界史を眺めてみると、彼の主張は非常に頷けるものである。無学で愚かなな一人の朝鮮人が伊藤博文を暗殺した事によって日韓併合は急加速し(併合反対派の重鎮を暗殺したのだから当然ではあるが)、一人のユダヤ人が起こしたドイツ大使暗殺未遂がユダヤ人に対する怨嗟の声を生み出し「
クリスタル・ナハト」を現出させた。暗殺によって、意図したものとは全く逆の方向に歴史が動き出すことは決して珍しい事ではない。
そしてもう一つ、一般市民を巻き揉むテロを否定していたゲバラだが、もし今のアメリカに対するイスラム世界のテロを目にする事があったなら、彼はいったい何を思ったのだろう?
「ゲリラ戦争」
著者:エルネスト・チェ・ゲバラ