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 以下、ネタバレありです。

 脱衣戦闘という要素に引かれて購入。こういういかにもエロゲといった感じのギミックは大好き。
 プレイしてみるとその点に関しては満足の行く出来だった。脱衣のパターンも多くある程度脱衣箇所をコントロール出来るので自分のやりたいように脱がせる事も出来る。
 残念なのはバトルの大半を占める雑魚戦に脱衣のだの字も無い事。折角の脱衣ゲーなのに雑魚を無機質な機械にしてしまったのはコストの問題だろうが残念至極。

 脱衣ゲーなのにH度という事では今ひとつどころの騒ぎではなく全く足りていない。
 敵味方問わず陵辱展開などは一切無し、豊富なサブヒロイン勢もバトルでの脱衣以外のお色気は一切なし。
 ヒロインに関してもHシーンは一人当たり1~2回とかなり少なく物足りない。一部シーン削除でもしたような箇所が見受けられるが、明らかに力の入れどころを間違えている気がする。
 そもそも個別ルート自体、共通ルートが終了し、ルートが確定したと思ったら、直後にヒロインと相思相愛だった事が判明→Hの流れでユーザー置いてきぼり。手を抜くにも程がある。

 シナリオに関しては徹頭徹尾全く面白いと思える箇所が無かった。
 一番は主人公のキャラの不愉快さ。
 ストーリー上の設定では序盤、魔法の才能は無いものの必死の努力で才能を補ったみたいな感じになっているが、この努力という部分、作中キャラ達は手放しで賛美するものの、見ていて全く同意出来なかった。

 主人公の行った努力、身も蓋もなく言えばゲーセンでゲームをひたすらやっていただけである。
 勿論そのゲームの成績がアカデミー入学の条件なのだから、普通のゲームと一緒にする事は出来ないが、それしか行っていないのも事実である。

 例えば野球選手になりたい少年がバッティングが下手だからとひたすらバッティングセンターに通うというのは賞賛されるようなものなのだろうか。
 上手くなりたいなら他にも参考書を読むなり、指導を仰ぐなりやる事は多々ある。それをせずにひたすら我流で練習をしたところで、それは思考停止に他ならない。

 この主人公の関しても同様。すぐ近くにはその道の天才が二人もいるのだから、アドバイスなりなんなり受ける事は出来ただろうに、プライドが邪魔でもしたのだろうか、教えを乞うどころか練習している事さえ秘匿している有様。そもそもゲーセンでの練習以外のアプローチが殆ど見受けられない。
 主人公はゲーセンでのプレイ回数が突出していた事が作中で語られるが、逆に言えば、彼はそれしか行っていなかったのであろう。もはや努力しているというよりも、努力という名の現実逃避にしか見えなかった。目標に向かって、たとえそれが無駄であれ、何かをしているというのは焦燥感を打ち消すために執拗な処置だったのかもしれない。傍目には現実から逃げ回っているようにしか見えなかったが。


 シナリオに関しては単純な勧善懲悪ストーリーで退屈な事この上なかった。
 この作品に限った事ではないが、十八歳以上がプレイするにしては勧善懲悪というのは単純過ぎる気がしてならない。水戸黄門みたいなものなのかもしれないが。
 全てのシナリオが性善説に基づくヒロインの自己啓発のような印象を受けた。極論すればアンパンマンのストーリーを若干複雑にしたようなもので、昨今の仮面ライダーやガンダムシリーズなどに比べれば恐ろしく単純な流れ。


 私がこの作品を楽しめなかった一番の理由はシナリオライターと考え方が違う、若しくはシナリオライターが想定したユーザー層の人間ではないという事なのだろう。


「自分のためだけに他の人間を犠牲にしたいんだね」
「でも、そんなこと、1度も思ってなんかいないっ!」



 七夕ルートでのピエロと七夕のやり取りが象徴的だった。
 魔砲使いという「勇者」で有るために七夕はクラヤミという「悪」を必要としていると七夕を糾弾するピエロ。それを否定する七夕。
 しかし、そう考えるのは人間として当然の事ではないだろうか。

 もし人が死ななくなったら葬儀屋は商売上がったりである。それは困る。言い換えれば彼らは人の死を必要としている。しかし、だからといって彼らが悪なのでは無い。そうしなければ食っていけないだけなのである。
 同様に、もし結婚する人間がいなくなれば、ブライダル関係の人間は困るだろう。しかし、だからといって彼らが人の幸せを願う善人というわけではない。葬儀屋にとって人の死が飯の種であるように、彼らに取っては人の幸せが飯の種なだけに過ぎず、その本質は変わらない。

 光が無ければ影が存在出来ないように「悪」が存在しなければ「勇者」も存在できない。それは純粋な事実に過ぎず、そこに善悪という倫理観の介在する余地は無い。

 主人公達はそういった、いわば人間の本性を否定し、あたかも自分たちが聖人君子であるかの如く振舞い続けた。
 その非常に傲慢でどこまでも尊大な姿は滑稽ではあったかもしれないが、とても愉快なものではなかった。



 脱衣ゲーとしてはそれなりに楽しめるものの、あくまでそれなりであり、周回プレイなどする場合を考えれば、システムもお粗末という印象が強いです。そもそもフリーバトルが用意されていないとか、制作陣は頭に脳味噌詰まってないのかと問いただしたくなるレベル。
 昔ながらの勧善懲悪ストーリーが好きな人はいいかもしれませんが、それ以外の人には三千円以上のお金を出すのはお勧め出来ません。



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