以下ネタバレを含みます。
この作品作中にHシーンは一つしかありません。ですがその一つのHシーンが大変に素晴らしかったです。もしWHITE ALBUM2で名シーンを一つ挙げろと言われたら私は迷うこと無くこのHシーンを挙げます。
と言っても別にHシーン自体は平凡なものです。トノイケダイスケみたいにおしっこへの並々ならぬこだわりとそれを昇華させるヒロインのおもらし描写があるわけでもなく、木之本みけのようにねっとりと絡みつく変態さがあるわけでもなく。有り体にいってHシーン自体は凡百のものです。しかしそこで交わされる会話が素晴らしかった。
初Hで破瓜の痛みに春希に罵声を浴びせるかずさ。
「痛いって、このヘタクソ!」
「キスはあんなに上手かったのに…お前…」
「……」
「痛いよ、春希」
「春希のが入ってる…痛いよぉ」
ここのシーンは本当に素晴らしいと思います。具体的には「……」が。これこそWHITE ALBUM2最高の台詞なんじゃないかと。(喋ってませんが)
プレイした人はもちろん覚えていると思いますが、雪菜との経験でキスが上手になっていた春希にかずさはファーストキスの際激怒したんですよね。どうしてそんなにキスが上手いんだと。
そんな経緯があってここでも「キスはあんなに上手かったのに…お前…」の台詞が来るわけですが、おそらく…の後にはこんなニュアンスの台詞が続くんじゃないでしょうか「どうしてそんなにHは下手なんだと」
実際その前にヘタクソ呼ばわりしていますしね。痛みに耐えかねての刹那的な台詞だったんでしょうが次の「……」でかずさは少し冷静になって考えたんじゃないでしょうか。春希がキスは上手でもHが下手な理由を。
だから、「痛いよ、春希」の台詞は落ち着いた、優しいとも取れるトーンで発せられたのでしょう。そしてさらに次の、春希のが入ってる…痛いよぉ」には春希へ甘えるようなニュアンスを感じる事が出来ます。
自分が春希の初めてである事に気づき、そこに自尊心や優越感を見出し、最後には甘えるように安心して春希に身を委ねる。
短い台詞の一つ一つの間にめまぐるしく変わるかずさの感情がよく表現されていて、さらに二人の間の会話でありながらそこには雪菜の影が見え隠れしている。この作品が「WHITE ALBUM2」である事を含め、文句なく最高のシーンだと思います。