Leaf往年の名作WHITE ALBUMの名を冠した本作。一つの物語としてみるのなら抜群に良い出来だったと思います。
男一人と女二人の三角関係。しかも女二人は親友同士。と、何処にでも転がっていそうな題材でありながら、ライターの丸戸史明氏はそんな在り来りな題材を非常に魅力的に調理してくれました。
特に素晴らしく感じたのはヒロインの描写でしょうか。感情を欠落させたヒロインが主流となったエロゲ業界に於いて、喜怒哀楽をきちんと備えたヒロインはそれだけで新鮮に感じられますが、それだけがヒロインが魅力的に見えた理由では無いでしょう。
三角関係という間柄にある三人の間に流れる独特の空気が、物語の節々にひっそりと描写される感情の機微によって絶妙に表現されていました。登場人物が絞られている分、一人一人がしっかりと丁寧に描かれていて非常に感情移入しやすくなっています。雪菜の滲み出る黒さとか、かずさの愚直な犬っぷりとか堪りませんね!
物語としては序章という事もあるのでしょうが、非常に計算し尽くされ書かれているという印象です。ジャンルは全く違いますが推理小説に通じる部分があるとでもいうのでしょうか。各所に散りばめられた小さな伏線がきちんと収束していく過程はある種の爽快感さえ感じさせました。まあ、多少演出過多な気もしますが。
また、序章とはいうものの、きちんと一つも物語として完結しており単品でも十分楽しめる出来になっています。というかむしろ、ここで終わらせるのが一番美しいのではないか、といらぬ心配をしてしまう程。
と、物語としては文句のつけようのない作品でしたが、エロゲという商品として見た場合にはあまり高く評価出来ないというのも正直な所です。
とにかくコストパフォーマンスが悪い。初回限定版定価5800円の本作ですが内容を加味しない適正価格は精々半額程度でしょう。
シナリオは一本道で選択肢は一切無し。二週目に多少シーンが追加されますがそれも精々数カ所。Hシーンは一回のみでCGの枚数も少なくプレイ時間は十時間に届くか怪しいところ。堂々と分割商法を宣言しているその心意気は良いのかもしれませんが一ユーザーとしてあまり気分の良いものでもないのは確か。しかもそんな内容なのに頻繁にディスクチェックを要求してくるのも癇に触ります。いやまあ、商売としては正しいんですけれどね。
エロゲというより絵附きの小説といった感じの作品ではありますがそれを理解した上で購入するのなら文句無しにお薦め出来る作品だと思います。もちろん、値段に納得出来ることが条件ではありますが。