作家を殺すにゃ刃物はいらぬ。Tony原画があればいい。
この作品を買ってはいけない人
時間が無い、作業ゲーが嫌いな人(情報無しでプレイするとスキップしている時間が膨大)
純愛が好きな人、NTRが嫌いな人(輪姦・凌辱有り)
文学(笑)作品を読みたい人(時代考証が出鱈目でテキストの質が低い)
抜き目的の人(ディスクレス不可・シーン回収まで時間が掛る)
この作品を買ってもいい人
取り敢えずTonyならなんでもいい人
「ヤンデレ最高!」な人
お金と暇の使い道に困っている人
全てのTony氏が原画を担当した作品がそうであるように、この作品もまた駄作の謗りを免れない作品であるといえるでしょう。
本作のシナリオライター丸谷氏の作品は今までに何度かプレイしていたので期待していたのですが、Tony氏の絵にはシナリオライターを堕落させる呪いでも籠められているのでしょうか……。
丸谷氏の職分で言えばまずテキストそのものが酷い。大正時代を舞台にした作品で、その雰囲気を出そうとした事は窺えますがその仕事が如何にも粗雑すぎます。
無論、大正時代そのままの文章を書けと言っているのではありません。そのようなもの大多数の人にとっては読みにくくてしかたないでしょうから。
しかし、英吉利(イギリス)、左様(そう)今些(もっと)などといった書き方をして時代物の文章を装っておきながら平気で時代にそぐわない単語や戦後略字などを使用し、登場人物達が現代の価値観、倫理感に則った言動を繰り返すというのは如何にもアンバランスな印象を受けます。
個人的に特に酷いと感じたのは舞子との支那事変を予言する会話の下り。シナリオライターには歴史に関する知識が欠如していると言わざるをえません。単語の使い方から情勢認識まで出鱈目もいいところです。せめて「中国」と「支那」の言葉の意味と使い方ぐらい調べておけと言いたくなる次第。もっとも、「支那」に関しては現在でも差別用語だと思っている人が大多数でしょうし、「中国」のように言葉自体は古くからあってもその意味が変化している言葉というのは意識していないと現在と同じ意味で使ってしまうのも仕方ないことなのかもしれませんが。
シナリオに関して言えばその冗長さ、主人公の不快さ等もありますが、それよりもシステム自体が足を引っ張っている印象が強いです。
合計四十八のエンディングという事ですが多ければいいというものでもないでしょう。この無駄としか思えない数と内容のエンディングとさらに多い選択肢がこの作品を作業ゲーと化した一番の原因だと思います。せめて周回プレイにそれなりの意味を持たせるか、フローチャートやシーンスキップといった快適に遊べる工夫が欲しかったところ。それでもゲーム性の排除が進んで久しいこの業界においてあまり受けいられれるものではないでしょうが。ストーリーも含めて出る時代を間違えたのかもしれません。
Tony原画の呪いが解かれる事が期待された本作ですがまだまだ呪いは続きそうです。個人的にはTonyの呪いとルドルフの呪い、どちらが先に解かれるのか興味のあるところです。