「依存少女たちによる嫉妬・修羅場AVG」と銘打たれ開発日記において盛んに「ヤンデレ」を喧伝された本作ですが、嫉妬はともかく修羅場やヤンデレといったものが作品内に登場したかと言うと大いに首を傾げざるを得ないというのが正直なところでした。
修羅場に関しては何処を差してそう呼んでいるのか判断つきかねます。そもそも個別ルートに入ると基本的に他のヒロインは身を引いてしまい、物語の焦点そのものも恋愛でから離れていってしまうので。序盤にはそれっぽいやりとりがあるにはありましたが、あれで修羅場ゲーになるなら「
ヨスガノソラ」も「
さくらむすび」も修羅場ゲーになってしまいます。(もっとも、個人的にはさくらむすびの桜と可憐のやりとりが至高の修羅場シーンなのですが)
ヤンデレに関しては確立した定義が存在しないので判断が難しいのですが、私にとってのヤンデレとは
①主人公に対する愛情が極めて強い事
②行動が常軌を逸している事
③その常軌を逸した行動が愛情からの延長線上にあること
以上三点がその定義となります。(他にも色々ありますが大まかに)
そしてそれを前提とすると、この作品に登場するヒロインはヤンデレとはいい難い。
確かに三者三様の気違い振りを露呈はしていますが、姫歌のそれは神であるという自分の存在そのもの起因するものです秋人の存在は関係無いですし、綾子のストーカー行為は秋人の告白を受け入れられない代償行為としての色合いが強く、自殺衝動に関しても秋人は直接の原因たりえません。綾子になりきり秋人の身体を求める小春が一番ヤンデレと呼ぶに相応しいかもしれませんが、それにしても綾子への遠慮が感じられ、主人公への愛情と言う点でも疑問が残ります。
結局、自殺したり流血したり監禁したり正気を失ったりとテンプレ的な、極めて安っぽいと言わざるを得ない部分でしかヤンデレを表現できていなかったと言うのが私の感想です。シナリオライターと私とではヤンデレに対する解釈が違ったと言ってしまえばそれまでなんですが、「ヤンデレにおいて重要なのはそこに到る過程」「ヤンデレ=流血沙汰ではない」などと声高に喧伝されていたので肩透かしにされた印象が強いです。
しかし、この作品における評価で実はヤンデレだの修羅場だのは些細な問題でしかなかったりします。というのも、
そんな事はどうでもいいくらいシナリオがグダグダなのです。 終盤当然に明かされる驚愕の真実。
担任のロリコン変態教師は実は神社庁の回し者でした。そしてその神社庁の目的は姫歌を利用しての日本統一でした。綾子は過去神社庁の実験によって一度殺され復活していました。姫歌が信者の願いを受けて正気を段々失っていったのも全て神社庁の陰謀によるものでした。etc.etc.
狂っているのはヒロインではなくシナリオライターの方だと思います。 どれだけ凄いんですか神社庁。創作物と言えどこんな扱いが許されるのは
ヴァチカン教皇庁ぐらいのものですよ! ヤンデレが売りというよりも、ヤンデレに振り回されたといった感じの作品でした。最初にヤンデレヒロインを登場させるという構想があってそれからシナリオを附け足したような印象を受けます。しかも、キャラクター主導にするならともかく感動作でも作ろうとしたのか、無駄に設定を詰め込んでシナリオを頑張った為後半が超展開になってしまっています。
ヒロインはキャラが立っていたし、黒髪にこだわった点も斬新でした。背景画に問題があるものの、CGの質は良好。ヤンデレに固執せず、ドラマCDや序盤のノリを大切にして作品を作っていれば評価は全然違った物になったと思います。