「穹をクリアしてしまったら他のヒロインのルートをプレイする事なく放置することになりそうだから」という理由で大本命の穹シナリオの攻略を一番最後に回した私ですが、その考えは当たっていたものの、行動そのものは間違っていた気がしてなりません。どう考えてもわざわざフルコンプする必要のない作品でしたから……。
そんなわけで「ヨスガノソラ」大本命の穹シナリオです。Hシーンが他のヒロインより多かったり、初回プレイ時には攻略不可という縛りがあったりと色々と優遇されている穹ですが、シナリオ自体も他のヒロインに比べて力が入っているのが見て取れます。また、出来そのものも他のヒロインより一枚上。もっとも、それはあくまで「ヨスガノソラ」という作品の中での話であって他の作品と比べた場合には精々平均点程度の出来でしかないと思いますが。穹シナリオはあくまで穹というヒロインの魅力によって支えられ成り立っているものだと思います。ですから、穹に魅力を感じない人にはなんの価値もないシナリオかと。
さて、そんな穹シナリオで私が一番に感じたのは物足りなさでした。何が足りないかというと穹の病みっぷりだったりします。
「ひぐらしのなく頃に」のレナや「未来日記」のに代表されるように刃物を振りかざすヒロインイコールヤンデレとの認知が広くなされている昨今、流血に頼らずにヤンデレと呼べるヒロイン像を提示したヨスガノソラには非常に好感が持てますが、残念ながら尺に物足りなさを感じてしまいました。
ヤンデレとしての穹の魅力が如何無く発揮されるようになるのは穹が悠に抱かれて以降です。悠と相思相愛である事を知った穹は誰憚る事無く感情のままに悠に接するようになります。それは自分たちの関係が周囲にばれる事を危惧する悠とは対照的であり、この純粋な悠への愛情こそが穹をヤンデレとして成り立たせています。
そんな穹によって周りに自分たちの関係がばれる事を危惧しながらも、肉欲に抗えず穹との関係を続けていく悠。視界を悠だけで埋め尽くす穹と穹への愛情と世間体の間で揺れる悠。そんな二人のコントラストがシナリオの一番の肝だったと思います。
しかしそんな二人の関係は思いのほか早く破綻してしまいます。正直、この二人が結ばれてから周囲にばれて破綻されるまでの時間が短すぎた気がします。この辺もっと尺をとってゆっくりと穹の肉体におぼれていく悠の姿を描いていって欲しかったというのが正直なところ。堕ちるなら出来るだけ高いところから落ちた方がインパクトがあるというものです。
周囲にばれてからはエンディングまであっというまでした。一気にヘタレ化して日和見に走り穹を拒絶する悠。その後はまあお決まりの展開で穹が行方不明になり悠が見つけてめでたしめでたし。待ちに待ってついに出てきたメインディッシュなのにそのあまりの量の少なさに愕然です。オチなんて端から期待していないので過程だけでもキチンと書いてほしかったです。切実に。