OHP批評空間の点数:95点
エロゲに限らずアニメ、ラノベなどにおいてハーレム作品の増加が叫ばれている昨今ですが、本当に「ハーレム」と呼べるような作品はほとんど無いというのが個人的な意見だったりします。
言うまでもなくハーレムとはイスラームにおける後宮の事であり、日本における大奥と類似するものですが、現在巷にあふれている「ハーレム作品」、主人公に好感度MAXの女性複数が群がっているというだけでちっともハーレムを形成しているようには見えません。何せ、ハーレムの存在意義であり肝心要の生殖行動を複数の女性と行う事がほとんどないのですから。
大抵のハーレム作品におい主人公は自らに向けられる好意に気づかないか、気づいてもスルー。物語終盤において一人の女性を選んだかと思えば他の女性を袖にするといったハーレムの主にあるまじき行動を取ります。
男性一人に女性複数という形こそハーレムのそれと類似していますが、内実を伴っていないそのいびつな姿は精神的ハーレムとでもいうべきものであり、本来のハーレムからは大きくかけ離れたものであると言えます。
このようなエセハーレムがもてはやされ、あまつさえ「最近はハーレム作品が多すぎる」だなどとやり玉に上げられる様はハーレム好きとしては許しがたい状況であります。
そんな状況にあってこの「彼女と俺と恋人と。 」は他のエセハーレム作品とは一線を画する素晴らしい作品であったと言えます。
この作品、他の一般的な純愛作品と比べるとシナリオが特殊な形をしています。
ヒロインとの出会いと交流、告白からSEXまでは他の作品と同様の流れで進みますが、この作品の場合、この一連に流れはほんのプロローグに過ぎません。
メインヒロインの綾乃と出会いそして結ばれる。通常の作品のオープニングからエンディングまでをこの作品はダイジェストのような形で一気に進めてしまいます。しかし、そこで話は終わらず、むしろそこから物語は動き出します。
この作品が描くのはいわば綾乃ルートエンディング後のエピソードとも言えるものです。
家庭環境から男が複数の恋人を持つことに抵抗の無い綾乃という存在はある意味とても特殊な思考をしているように思えますが、昨今の純愛モノ作品に登場するヒロインに比べると非常に筋の通った考えをしているとも取れます。
少なくとも私にはそれまで主人公の事が大好きだったのに、主人公が他のヒロイン(それも自分に極々近い人間)を選んだ途端、嫉妬の一つ泣き顔の一つも見せず笑顔で「おめでとう」などと言えるヒロインは感情の一部が欠落しているようにしか思えません。それか、元々主人公の事が大して好きでは無かったか。
他のヒロインのルートに進んだ場合でも主人公と綾乃の恋人関係は決して解消されず、それどころかルートヒロインを含めた3Pにまで発展するこの作品こそは本来の語彙に近いただし意味でのはハーレムゲーと言えるのではないでしょうか。多少人数が少ないですが。
なし崩し的に複数の女性に手を出す主人公には眉を顰める人もいるかもしれませんが、彼、他の作品の主人公に比べたら至って健全で人間らしい感情の持ち主だと思います。
多くの場合高校生という設定である主人公とヒロイン(まあ建前は大学生、やってる事は精々中学生ですが)。やりたい盛りの男が他に好きな人がいるからなどという理由で自分に好意を向けてくれてる女性を袖にするのはどう考えても不自然です。他に好きな娘が居たとしても美人に迫られたら多少なりとも心揺れるのが人情というものです。
3Pバンザイの三人の関係はリアリティが無いと非難されるかもしれませんが、心情的には却ってリアリティにあふれているのではないかと。
以下ヒロイン毎の感想
美萩野 綾乃
メインヒロインにしてある意味本作の主人公。
家事万能良妻賢母なテンプレ的優等生ヒロイン。
これだけ見るとありふれた設定でいかにも埋没してしまいそうなヒロインですが、父親に複数の愛人という特殊な家庭環境で育った為に「主人公に他の恋人が出来ても気にしない」とその一点で他に類を見ない独創的なヒロインに仕上がっています。
それだけに彼女のルートはやや物足りない感じ。最大にして唯一の特徴が全く生かされないのですから致し方ありません。正直彼女のルートは無くても良かったのではないかと。先に述べたようにこの作品自体彼女のルートみたいなものですしね。
他のヒロインのルートに進んだ時は彼女が振られるんじゃないかとヒヤヒヤしましたが決してそんな事は無く。
この一点だけでも素晴らしい作品だったと言えます。
徳吉 優子
主人公の幼馴染ポジションのヒロイン。
主人公がぽっと出のヒロインに掻っ攫われてずっと前から主人公の事が好きだった幼馴染が涙するというのはよく有る展開。
この作品の場合も、主人公に綾乃という彼女が出来て動揺を隠し切れない彼女ですがルートではめでたく結ばれレッツ3P。彼女の切ない心境と脳天気にも思える綾乃の「三人で付き合えばいいじゃない」発言は良いコントラストでした。
定番のポジションに定番のキャラ設定でしたが一番好きなヒロインでした。
白兎 つくし
綾乃の親友で最初は主人公を敵視していたものの次第に……。
親友である綾乃を奪った憎い奴である主人公とその主人公にベタ惚れの綾乃。二人の間で次第に親友の恋人である主人公に惹かれていくという複雑な心境と葛藤が上手く描かれていてシナリオとしては一番好みでした。
一つ文句を言うとすればフェラシーンの背景。背景は生活感があった方がエロくて良いと思うんです。
小沢見 千景
てっきり未亡人だと思ってました。管理人的に考えて。
実際シナリオは身体を持て余した未亡人が肉欲を求めているようにしか……。いや、目隠しプレイとか大好きなんですけど!
美萩野 小乃花
綾乃の腹違いの妹。この設定だけでお腹いっぱいだったり。腹違いの姉妹丼って最高にエロいと思います。
妹と言う事もあって、綾乃が唯一嫉妬らしい感情を見せるルート。まあ結局は収まる所に収まるのですが。
声のみ出演の二人の父親、もっと掘り下げてみても面白かった気がします。娘二人を同じ男に取られるってどんな心境なんだろ?
松上 すすき
主人公の妹。
兄である主人公に見ていてもらわないとおしっこ出来ないって、この設定考えた人は本当に頭おかしいと思います(褒めてます)。そんな二人に面食らいながらもなんとなく受け入れてしまう綾乃はいかにも綾乃って感じですね。
初回版限定のサブヒロインという位置づけだからなのかどうか、唯一綾乃含めた3Pが無いのが残念でした。
綾乃に優しくリードされて身体を開くすすきが見たかったのに!
全体的にテキストは派手なものではないものの良質な出来で読んでいて退屈しませんでした。
シナリオは全ルートとも大きな山場が無いのが特徴。人によっては物足りないと感じるかもしれませんが、シナリオ収束させるために唐突に事故にあったり、引越し話が出てきたり、許嫁が登場する展開が嫌いな私にとっては減点材料にはなりませんでした。
無駄かつ冗長なまでに山場を演出する作品が多い中、こういう盛り上がりを抑えた作品珍しいですからね。他にはトノイケダイスケシナリオの作品位しか思い浮かびません。
残念だったのは全体的にややボリューム不足だった点。ほとんど唯一の欠点と言えます。もう少しボリュームがあれば本当に文句のつけようのない作品でした。
サウンド面もDuca&安瀬聖という事で文句のつけようがありません。初回版にフルバージョンのOP&ED曲を含んだサントラが附いてくる点も+。
システム面も必要な機能はひと通り揃っている&ワイド画面対応でストレスを感じる点はありませんでした。
今までプレイしてきた作品の中でも十指に入る作品でした。これから先、是非こういった設定の作品が増えて欲しいと思います。というか、綾乃のようなヒロインが増えて欲しい。
以前はFDを作らない方針だったPULLTOPですが、最近解禁されたようなので是非この作品もFDを作って欲しいと思います。その時は是非3Pから進んだ4Pも入れて。